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建物状況調査(インスペクション)のすすめ

既存住宅(中古住宅)を購入しリフォームして住むという選択をされる方が増えています。既存住宅の活用はストックの再利用や新築と比較して限られた予算の中でマイホームを取得できるということなどから関心が高まっています。しかしながら既存住宅は特に経年で劣化をしていることが多いため、購入時にその状態などを不安に思う方が多いのも現状です。

そのような問題を解消し、より既存住宅の流通や活用を促進するために建物状況調査(インスペクション)の制度があります。インスペクションは既存住宅の流通が盛んなアメリカなどで活用され既存住宅の流通システムに制度として組み込まれております。日本では、平成29年2月に既存住宅状況調査技術者講習制度が創設され、平成30年4月には宅建業法の改正により宅建業者には媒介契約の締結時に建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の交付などが義務化されました。

既存住宅を取得の際やその他、既存住宅や空き家の活用にあたっては建物状況調査を活用して関係者の安心・安全な住宅の利活用が望まれるところです。

以下は国土交通省 宅地建物取引業法における建物状況調査に関するQ&Aより引用いたしました。

建物状況調査(インスペクション)とは

建物状況調査とは、既存住宅の基礎、外壁等の部位毎に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の有無を目視、計測等により調査するものです。

瑕疵がないことを保証するものではありませんが、住宅の品質に関する情報を提供することにより、安心して取引ができるよう、劣化事象等を把握し、明らかにするものです。

誰が建物状況調査を行うのですか。資格等はありますか。

建物状況調査は国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が実施します。講習を修了していない建築士や検査事業者が実施する調査は、宅地建物取引業法(以下、「宅建業法」)に基づく建物状況調査には当たりません。

建物状況調査を実施する者(以下、「調査実施者」)は調査当日、有資格者であることを証明できるカード型の修了証等を携帯していますので、提示を依頼することで有資格者かどうかを確認することができます。

また、既存住宅売買瑕疵保険への加入を希望する場合は、住宅瑕疵担保責任保険法人の登録を受けた検査事業者の検査員に、依頼する必要があります。

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インスペクションを実施するメリット

インスペクションを実施するメリットは売買の場合、売主・買主が物件の状況をお互いに確認し、売買が円滑に進むことが期待されます。瑕疵があったとしてもその瑕疵が明らかになるため、引き渡し後のトラブル防止や、買主がどこの部分を修繕しなければならないかなどが事前に把握でき、その備えができます。

インスペクションについては建築士(既存住宅状況調査技術者)が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に基づき建物の調査を行い、その調査結果を「報告書」にとりまとめることを言います。また具体的な調査対象の範囲は以下の通りです。

調査対象の範囲

(1)構造耐力上主要な部分

基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するもの)、床版、屋根版または横架材(はり、けたその他これらに類するもの)

(2)雨水の侵入を防止する部分

屋根もしくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具、雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根もしくは外壁の内部又は屋内にある部分

屋根

屋根葺き材の著しい破損、ずれ、ひび割れ、劣化、欠損、浮き、はがれ、防水層の著しい劣化、水切り金物等の不具合

小屋根(下地部分を含む)

著しいひび割れ、劣化、欠損

天井(乾式仕上げ、塗装仕上げ等)

下地材まで到達するひび割れ、欠損、浮き、はらみ、剥落

外壁及び軒裏

下地まで到達するひび割れ、欠損、浮き、はらみ、剥落金属の著しい錆び、化学的侵食 など

柱及び梁

著しいひび割れ、劣化、欠損、梁の著しいたわみ など

外壁(開口部を含む)

シーリング材の破断、欠損、建具の周辺の隙間、建具の著しい開閉不良

バルコニー

支持部材、床の著しいぐらつき、ひび割れ、劣化

著しいひび割れ、劣化、欠損、著しい沈み、6/1,OOO 以上の勾配の傾斜

土台及び床組

著しいひび割れ、劣化、欠損

基礎(立上り部分を含む)

幅O.5mm 以上のひび割れ、深さ20mm 以上の欠損、コンクリートの著しい劣化、さび汁を伴うひび割れ、欠損、鉄筋の露出

蟻害

著しい蟻害

腐朽等

著しい腐朽等

参考:既存住宅インスペクション・ガイドライン

国土交通省は平成25年6月、消費者が中古住宅の取引時点の物件の状態・品質を把握できるようにするため、第三者が客観的に住宅の検査・調査を行うインスペクションについて、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を取りまとめました。

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インスペクションの活用事例

以下は令和6年度の住宅ストックの相談体制整備事業での実際のインスペクション活用事例です。中古住宅や空き家の利活用にあたり、これらの事例をご参考にインスペクションの実施をご検討いただければ幸いです。

  • 1.空き家を賃貸に出すにあたってのケース1

    物件概要

    築年数:昭和50年(築50年)
    構造:木造2階建 増築部分あり

    インスペクションの背景

    立地の良い場所のため、建物は経年相当に劣化しているが、賃貸に出すことが可能かどうか検討するため、所有者様で実施をすることになった。

    インスペクション実施の動機、期待すること

    賃貸での活用の検討にあたり、建物の劣化や不具合のある部分の把握と、その修繕にかかる費用などの算段を付けるため。

    今後の利活用について

    インスペクションの結果、経年相当で建物の劣化が多く発見され、修繕して利用可能ではあるが賃貸に出すためには予想以上の多額のリフォーム・修繕費用がかかることがわかった。そのため、方針を変更して売却を選択することにした。

    解体更地の条件で売り出しをしているが、立地が良いため現状渡しで建物を使ってみたいとの問い合わせもあり、その際はインスペクション報告書を開示して買主様に検討をいただくことができるため、この面でもインスペクションが役立っている。

    インスペクションでの主な指摘事項


    [1] 床の沈み、劣化(経年劣化による)


    [2] 天井の水染み跡(以前に屋根を修繕済みで対応)


    [3] 蟻道跡(いまはシロアリはいなかった。)


    [4] 床傾斜(建築当時、地盤改良などしていないため)

  • 2.個人間売買のケース1

    物件概要

    築年数:平成8年(築29年)
    構造:木造平家建

    インスペクションの背景

    個人間売買で買主様からの要望で、仲介業者が売主様にお願いをして実施することになった。

    インスペクション実施の動機、期待すること

    インスペクションを実施して、売主・買主双方が建物の状況を理解することにより、売買が円滑に早く進み、また取引の安心安全につながることを期待。

    今後の利活用について

    売買が成立して買主様でリフォームを施し居住されている。インスペクションを参考に建物の悪いところがわかり、事前にその部分に対応した修繕やリフォーム費用の算出もできて良かった。

    インスペクションでの主な指摘事項


    [1] 外壁表面割れ


    [2a] 蟻道


    [2b] シロアリ被害による木部の劣化(シロアリ防蟻工事の必要あり)


    [3] 外壁のクラック(雨水侵入の恐れのため、クラック補修、塗装の必要あり)

  • 3.業者による買取物件販売のケース

    物件概要

    築年数:平成16年(築21年)構造:木造2階建

    インスペクションの背景

    不動産業者が個人から物件を買い取って販売する際に、商品価値を高める効果や、安心・安全・円滑に取引が進むことを期待して、インスペクションを実施。

    インスペクション実施の動機、期待すること

    修繕・リフォームをしてインスペクションを実施後に販売することで、買主様が購入にあたり、劣化・不具合等も解消されているという安心感を持ってもらい、取引がスムーズに進むこと、また販売後に修繕・リフォームに不具合があった場合には、不動産業者が保証をすることになるので、そのチェックの役割も期待。

    今後の利活用について

    購入希望の買主様に対して、修繕・リフォームをした後にインスペクションを実施した物件であることを説明することにより、円滑に売買が成立し、居住されている。

    インスペクションでの主な指摘事項(特に指摘事項などは無かった。)

  • 4.空き家を賃貸に出すにあたってのケース2

    物件概要

    築年数:昭和44年(築56年)構造:木造平家

    インスペクションの背景

    空き家になってしまった相談者様の実家の利活用を検討するにあたり、経年相当の劣化がある建物ではあるが、ご両親がこだわって作られたお家であり、修繕を行うことで一定期間賃貸で運用できないかとの依頼を受け、インスペクションを実施した。相談者様は耐震診断の制度があることはご存じだったが、インスペクションはご存じなかった。

    インスペクション実施の動機、期待すること

    賃貸に出すことを念頭に考え、賃貸後に劣化部分で入居者とトラブルにならないために、インスペクションを実施して不具合や劣化部分を把握し、その部分の修繕にはどれくらいの費用がかかるかを積算して、当面の賃貸計画(事業収支)を立てるため。

    今後の利活用について

    インスペクション後、経年相当の劣化や不具合が見つかった。その結果から修繕費用と最低限のリフォーム費用も積算した。予想される賃料収入と諸々の支出をチェックして賃貸計画を立て、まずは修繕・リフォーム工事を実施予定である。

    インスペクションでの主な指摘事項


    [1] 基礎ひび割れ、欠損


    [2] 外壁ひび割れ


    [3] 天井の水染み跡(屋根・防水シートなどを詳細調査して、修繕が必要)


    [4] 床傾斜(建築当時、地盤改良などしていないため)

  • 5.個人間売買のケース2

    物件概要

    築年数:平成11年(築26年)構造:木造2階建

    インスペクションの背景

    個人間売買で買主からの要望で実施した。買主様は中古住宅の取得に向けて色々と勉強されていたため、インスペクションの制度をご存じでした。売主様は制度をご存じなかったため、仲介業者からお願いをして同意していただいた。

    インスペクション実施の動機、期待すること

    買主様が物件の購入を検討する中で、インスペクションによって、この物件の状態がどのようなものか確認するため。

    今後の利活用について

    インスペクション後、報告をご参考に本物件の購入を決定され、無事に売買が成立して買主様が居住している。

    インスペクションでの主な指摘事項


    [1] 基礎のひび割れ


    [2] 外壁のひび割れ


    [3] 雨漏り跡(直上のバルコニーからの雨漏りの可能性)


    [4] 瓦のずれ

  • 6.個人間売買のケース3

    物件概要

    築年数:昭和56年(築44年)構造:木造2階建

    インスペクションの背景

    個人間売買で買主様からの要望で実施した。仲介業者からお願いをして、売主様に同意していただいた。

    インスペクション実施の動機、期待すること

    個人間売買のケース2同様、買主様が物件の購入を検討する中で、インスペクションによって、この物件の状態がどのようなものか確認するため。

    今後の利活用について

    インスペクション後、報告をご参考に本物件の購入を決定され、無事に売買が成立して買主様が居住している。

    インスペクションでの主な指摘事項


    [1] 目地のひび割れ(雨水侵入の恐れのため、クラック補修、塗装の必要あり)


    [2] 雨水侵入跡あり


    [3] 屋根の劣化(コーキング補強など必要)

  • 7.売却検討にあたって売主が実施したケース1

    物件概要

    築年数:昭和57年(築43年)構造:木造2階建

    インスペクションの背景

    仲介での個人間売買を検討する中で、経年の割には建物の状態が良いため中古住宅として売却を希望されている。売主様はインスペクションのことは以前からご存じで、現在の家のコンディションを確認するため実施した。

    インスペクション実施の動機、期待すること

    経年した建物ではあるが、建物のコンディションが良いことをインスペクションにより実際に確認することで、買主様に対してアピールができることを期待。

    今後の利活用について

    インスペクションの結果、経年相当の劣化はあるものの、特に問題は無いことがわかり、今後、中古住宅として売却活動を予定している。

    インスペクションでの主な指摘事項


    [1] 床傾斜(建築当時、地盤改良などしていないため)


    [2] 内壁のひび割れ


    [3] 内壁変色(染み跡)(以前に屋根を修繕済みで対応)

  • 8.売却検討にあたって売主が実施したケース2

    物件概要

    築年数:昭和44年(築56年)構造:木造2階建 増築部分あり

    インスペクションの背景

    売主様のご実家が空き家になり、ご両親がこだわって作られたお家なので、中古住宅として売却を希望されている。定期的にメンテナンスは行ってきたが、現在の家のコンディションを確認するため実施した。

    インスペクション実施の動機、期待すること

    中古住宅として売却するにあたり、売主様が建物の現在の状況を把握しておくため。インスペクションの結果で買主様にもこの建物の状況を理解してもらい、中古住宅として売却できることを期待。

    今後の利活用について

    インスペクション後、その他の手続きが終わり次第、中古住宅として売却活動を予定している。

    インスペクションでの主な指摘事項


    [1] 床の隙間


    [2] 増築取り合い部内壁ひび割れ


    [3] 外壁ひび割れ

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今後のインスペクション活用に向けて

これから平成に入って建築された、既存住宅として活用可能な品質も高くリフォームにも向く物件が多く流通するようになることが予想され、また、住宅取得の選択肢として既存住宅を選択される方も増えております。既存住宅の流通円滑化や既存住宅が社会のストックとして再活用されることは社会的にも意義があり、その実現のためにインスペクションの役割が期待されます。

今回のインスペクションを通して売主様、買主様、インスペクション担当者様や仲介業者様からヒアリングにご協力をいただきましたが、色々なご意見を頂戴いたしました。

  • インスペクションの制度をまずは売主・買主に知ってもらうことが必要である。
    (売主様、買主様、インスペクション担当者様、仲介業者様)
  • 不動産業者にとって、建物の詳細については専門領域を超えた分野であり、建築士と協力してインスペクションを実施することにより、中古住宅流通のレベルアップが図れる。
    (仲介業者様)
  • 建物の気になる部分の状況がわかり、リフォーム費用も把握できた。
    (買主様、仲介業者様)
  • 費用面などの優遇で何か国の支援があれば、インスペクションが普及できるのではないか?
    (仲介業者様)
  • 給排水や設備、シロアリなどの調査もセットでインスペクションを行うとより良い。
    (インスペクション担当者様、仲介業者様)
  • インスペクションは目視・非破壊調査であり、調査範囲などに限界もあるため、依頼者にはそのあたりの条件などを良く説明する必要がある。
    (仲介業者様)

インスペクションについて多くの方に知っていただき、その普及・活用が進むことを願い、当団体でも引き続き、インスペクションの普及啓発を実施いたします。

当相談センターでは建築士や既存住宅状況調査技術者との連携がございます。インスペクションについてご相談されたい場合は、専門家をご紹介いたします。お気軽にご相談ください。

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